海外旅行に1人で行くのは不安ですよね。
その不安感は大事です。いっぱいに噛みしめて可能な限りの対策を行ないましょう。
しかし、そのリスクを背負ったとしても、1人で海外に行く経験は大きいです。
私の悔しい、でも心が動いた海外1人旅の経験をお話しします。
私が大学4年生の時の話です。
卒業前に1人旅がどうしてもしてみたくなり、同時に好きなイタリアサッカー、特にASローマの試合を直接見てみたいと思いました。
そして、どうせ行くなら大きな旅行をしてみたいと思い大都市4つを周ることを決めました。
バイトをしてお金を貯め、飛行機チケット、ホテルの手配、サッカーの観戦チケットも事前に全て手配をしました。
いざ出発の日、私は初めての1人旅に一切の不安は感じず空港に向かいました。東京から直行便で十数時間、ついにイタリアのローマに到着しました。
コロッセオやトレヴィの泉、世界最小国家のヴァチカン市国など、憧れていた景色がそこにはあり夢中で街を歩き、写真を撮りました。
ローマでの観光を2日楽しみ、列車で水の都・ヴェネツィアへ向かいました。
ヴェネツィアは今まで訪れた街で一案好きかもしれないぐらい景色が綺麗で、人も陽気で楽しく、雰囲気も暖かい街でした。
その後は第2の都市、ミラノを訪れ、花の都フィレンツェを観光し、ローマに帰ってきました。
どの街もイタリアの歴史を感じさせられるような美しく綺麗な街で、楽しい時間は一瞬で過ぎていきました。
夢中すぎて撮った写真は1000枚ぐらいあったかもしれません。
帰国前最後のローマではいよいよ待ちに待ったイタリアサッカーの観戦が待っています。
私はホテルにチェックインした後、財布だけ持ち、身軽な格好で食事に出かけました。
ローマ最大の「テルミニ駅」の前を横切り反対側にあったレストランで食事を済ませた後、ホテルに向かって歩いている最中のことでした。
駅前で「ナガトモ?ナガトモ?ジャパニーズ?」という声が聞こえ、咄嗟に私は振り返ってしまいました。
当時は日本代表の長友選手がイタリアの名門、インテル・ミラノに移籍した直後で「日本人といったら長友」といった状況でした。
しかし、ここで振り向いてしまったのが運命の分かれ目でした。
酒に深く酔っていることがわかるイタリア人の青年3人がこちらに近ずいて来て、私に握手を求めました。
私は面倒だったために無視しようとしたのですが、握手を強要されてしまったので仕方なく握手をしました。
すぐに立ち去ろうとしたのですが、そのイタリア人は私のことを追いかけてきて今度は「イタリア式挨拶だよ」とでハグを求めてきました。
私はすぐにでもその場を去りたかったのでさっさとハグをし、足早にその場を去りました。
そう、ハグをしてしまったのです。
そして、ホテルに帰る前、大好きなジェラートを買って帰ろうと思った時に、財布がないことに気づきました。
「さっき駅前でハグされたときだ」
その思いが頭をよぎり、冷や汗が出ました。
すぐに現場に戻りましたが、もちろん既に彼らの姿はありませんでした。
幸いパスポートはホテルに置いてあり、出発前に3カ所に分けてお金を分けて入れておいたので若干のお金とサッカーのチケットは手元に残りました。
これは最低限すべき、すぐに出来る盗難対策です。
- お金を分けること
- パスポートは持ち歩かないこと
海外では現地のお金に換金する量を減らす代わりにクレジットカードを使用した方が換金率などの効率が良いため、どうしてもクレジットカードは持ち歩く事になりますが、現金は分けて必要最低限しか持ち歩かないようにしましょう。
盗難に気付いた後は、急いで加入してきた海外旅行保険の緊急連絡先に電話をしました。
そこからはもう激動。
クレジットカードを止め、担当の人の指示通りにローマの警察署に行き、盗難被害届をもらいに行きました。
イタリア語・英語・日本語の3言語が記載されていたので正確に状況を説明できました。
とにかくその日は悔しくて悔しくて、一睡も出来なかったのを覚えています。
不運なことに泊まっていたホテルはチェックアウト時に料金を払うタイプのホテルだったのですが、私の全財産はホテル~空港までの列車分と2回食事が出来るほどでホテル代を払える金額など残っていませんでした。
私は悩んだ末に、警察署に発行してもらった被害届を見せながらホテルスタッフに説明しに行きました。
説明した後に、スタッフのアントニオさんは何かを言っているのですが、イタリア語で全くわかりません。
そんな私の表情を察知し、インターネットの翻訳サイトを経由し私にこう言いました。
「今回は本当に不運です。しかし、あなたが生きているのは幸運です。あなたの大切な物を盗んだ人たちは悪い人ですが、イタリア人全てが悪い人ではありません。あなたの国にもいるでしょう?今回のことでイタリアを嫌いにならないでください。ホテル代はいりません。日本に帰ってクレジットカードが復旧したらここに連絡ください。」
と名刺を渡してくれました。
私は感動して泣いていました。
何度も何度もお礼を言いました。翌日に楽しみにしていたイタリアサッカーを見る予定があることを話すと、会場までのバスも手配してくれました。
私はただただお礼を言い続けるしかできませんでした。
アントニオさんの助けにより、私はイタリアサッカーの観戦を経て、何とか日本に帰国しました。
人に裏切られることも経験しましたが、同時にどんな時でも人に助けられるありがたみを感じました。
帰国してから数日後、クレジットカードを復旧させ、約束通りアントニオさんの名刺の連絡先にメールをしました。
イタリア語で来た返信内容を翻訳ソフトで翻訳すると
「あなたのことは覚えていますが、あなたの身に何があったかは覚えていません。そんな状況でお金はもらえません」
という内容でした。
私は言葉にならないほどの感謝の気持ちと、いずれ必ずまたホテルに足を運び、アントニオさんに会いに行くことを決めました。
人生初の1人旅である今回のイタリア旅行で、たとえ言葉が違っても、人と人はどんな時でも助け合っていけることと、人間本来の優しさの部分を知りました。
私の中で大きな大きな財産となりました。